【104冊目】山本直治「公務員 辞めたらどうする?」
- 作者: 山本直治
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/12/16
- メディア: 新書
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公務員限定の「転職対策本」である。
著者は文部科学省から人材派遣会社に転職し、その後公務員専用の転職コンサルタントとして独立した異色の経歴をもつ。そして、本書のような本は、まさにこの著者でなければ書けない本であろう。官庁勤務、企業勤務、起業のすべてを経験し、しかも人材派遣や転職支援に携わってきたのだから、これ以上のキャリアはない。
本書は、そもそも転職すべきかどうかというところから始まり、民間企業への採用から起業について、さらには天下りや国費留学後の早期退職の問題まで幅広く扱い、転職先の選び方から履歴書の書き方や面接のポイントまで懇切丁寧に説明してくれている。実際に日々、公務員の転職相談やコンサルタントを行っているだけあって、内容はきわめて具体的かつリアルであり、転職の難しさ、厳しさとともに、面白さ(というと語弊があるかもしれないが、自分というものが社会の中で総合的に試される転職という行為は、しっかりした覚悟と見通しさえあれば、実にエキサイティングで面白いと思う)を感じ取れるものとなっている。
公務員、特に国家公務員のキャリア組の若手の早期退職はかなり多く、一部では深刻な人材流出につながっているらしい。本書で示されているとおり、決して楽ではないとはいえ、公務員から民間への転職ルートはそれなりにあるといえる。しかし、逆に民間から公務員へのルートはどうだろうか。現状はほとんど民間への一方通行であろう。この現状をみるに、官民の人材競争において、官の側は大幅な遅れを取っているといわざるを得ない。国や自治体も(いたずらな厚遇をする必要はないが)、人材獲得競争の当事者としての危機感をもって、中途採用を含めた人材確保戦術を本気で考える時期に来ているように思う。