自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【41冊目】村上春樹「パン屋再襲撃」

パン屋再襲撃

パン屋再襲撃

村上春樹の短編集。

初出が80年代の中頃ということは、比較的初期の作品である。 20年以上前の小説にもかかわらず、内容がまったく古さを感じさせないことに驚かされる。

なんというか、時代の匂いというものがほとんどないのである。村上春樹の小説は一種の物語というか寓話的なところがあり、非常に具体的で現実的な部分と暗示的でシンボリックな部分が独特のかたちで混在している。そのことがおそらく、時を経てなお古びないことにつながっているのだろう。

村上春樹の小説は、ある意味、宙に浮いているような気がしてならない。まさに現代の寓話であり、物語や神話の世界に通じるなにものかが、どの小説にも底流している。そのくせディテールは執拗なまでに正確であり、あいまいな言葉がまったく使われていない。今さらであるが、すごい作家である。