【2464冊目】日高敏隆『世界を、こんなふうに見てごらん』
日本の動物行動学のパイオニアであり、たぶん日本でもっともチャーミングな学者のひとり、日高敏隆の晩年のエッセイ集。たいへんに読みやすく、やわらかく、それでいてものごとの本質の深みをしっかりと突いているのが、いかにもこの人らしい。
子供の頃は、学校をさぼって近所の原っぱに行き、芋虫に話しかけたり観察したりしていた。犬の死骸を見つけると、肉が腐って骨と皮になるまでずっと観察し、どんな虫が出入りしているのかを確かめた。そんな子供の頃のセンス・オブ・ワンダーを晩年になるまでずっと持ち続けた。
学者っぽくないのである。というか、ほんらい、ホンモノの学者とはこういう人をいうのかもしれない。著者はご自身のことを「いいかげん」だという。だが一方で、これほど自分の興味関心に忠実で、ひたむきな人も少ないのではないか。その上での生き方の絶妙なバランス感覚が、著者の場合、本来の意味での「良い加減」になっている。