【2317冊目】柚月裕子『慈雨』

 

慈雨

慈雨

 

 

過去の罪を悔やみながら刑事を引退し、妻と四国八十八カ所巡りをする神場。道のりの中で思い出す、刑事人生のエピソードの数々。部下の刑事と付き合っている、娘の幸知への複雑な思い。そして、過去の罪にかかわる16年前の事件とよく似た事件が起きる・・・。

事件の捜査と巡礼の旅の二つを軸に、さまざまな物語が重なりあい、多くの思いが絡まり合って、それでも最後は、老夫婦の上に降る雨によって浄化される。慈雨、をタイトルにもってきた著者のセンスに脱帽。この人の本は初めて読んだが、いい小説だった。

おそらくベースになっているのは、冤罪事件で有名な足利事件だろう。だが、あちらではジャーナリストが告発した冤罪とその隠蔽を、ここでは元刑事と現場の刑事たち自らが解決しようとする。それでいいのか、という思いはぬぐえないが、そのことは著者ご自身が重々承知だろう。だからこそ、事件が解決した後もぬぐえない悔恨は、ただ雨に打たれるしかなかったのだ。