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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2168冊目】スティーヴン・キング『ミスター・メルセデス』

 

 

 

 
ホラーの名手、キングの「ミステリー作品」。ミステリー小説に贈られるエドガー賞を受けたことで話題になった。

ミステリーといっても、古典的な犯人捜しではない。探偵役の元刑事と犯人の視点が切り替わりつつ、コンサート会場での大量殺人計画というクライマックスに突き進むという、ディーヴァーばりのジェットコースター・サスペンスである。

仕事探しのため市民センターの前に並ぶ市民の列にメルセデス・ベンツで突っ込み、8人の死者を出した「ミスター・メルセデス」。秋葉原にトラックで突っ込んだ加藤智大をどうしても連想してしまうが、この事件では犯人はそのまま逃げおおせ、事件は迷宮入りに。ところが、担当だった元刑事ホッジスの元に届いた一通の手紙がきっかけで、二人のデッドヒートが始まる。

退職刑事ホッジスをめぐる人間ドラマ、犯人であるブレイディの狂気と間抜けさで、何が起きるかわからない展開が最後まで続く。とんでもないどんでん返しがあるわけではないが、ストレートな犯人追跡サスペンスを一気に読ませる剛腕と、その細部にホッジスや友人の高校生ジェロームらの人間的な魅力を織り込む繊細な手業に、ただただ舌を巻く。特に、単なる脇役としか思えなかったホリーの活躍ぶりには驚いた。

それにしても、「ホラーの帝王」キングももはや70歳。だが退職刑事ホッジスの描写をみると、キングの年齢が衰えどころか武器になっているのを感じる。しかもこの「ホッジス元刑事」ものは、連作が予定されているとのこと。まったく、なんという体力、なんという創造力か。ホッジスとは違って、キングに「退職」の日が来ることはなさそうだ。