【2150冊目】スティーヴン・キング『ジョイランド』
舞台は昔ながらの遊園地、ジョイランド。観覧車、メリーゴーラウンド、射的、着ぐるみのマスコット、そして幽霊屋敷。そこで働いた若き日の思い出と、幽霊屋敷で殺された女の子にまつわるミステリーが絡み合う。
キングの作品としては賛否両論あるようだが、個人的にはとてもいい話、いい小説だったのではないかと思う。なんといってもジョイランドで働く日々の描写がノスタルジック。ジョイランドには行ったことがない(当たり前だ)にもかかわらず、そこが懐かしい思い出の場所に見えてくる。まあ、ノスタルジアとはそういうものなのだが。
車椅子の少年マイクと、その母親アニーが良かった(その分、ラストはちょっとショックだった)。この手の小説には案外珍しいのだが、語り手でもある主人公も魅力的。ミステリー小説との触れ込みらしいが、むしろ私には(そういう分類があるとすれば)ブラッドベリの系譜を継ぐカーニバル小説の佳品と読めた。ちなみにミステリーとしては、次作『ミスター・メルセデス』が本格的なミステリー小説とのこと。読まねば。