自治体職員の読書ノート

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【1950冊目】伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』

 

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

 

 

ヘンな小説である。主人公の伊藤はコンビニ強盗に失敗し、150年間外界から閉ざされていた島になぜかやってくる。そこにいるのはスジガネ入りの奇人変人ばかり。中でも極めつけは、言葉を話し、未来を見通す力をもったカカシである。そして、カカシが「殺され」、頭が持ち去られる……。

類例のない小説だ。ファンタジーとも、ミステリーとも、寓話とも取れる。ユーモラスだが奇妙な緊張感がある。ありえない設定なのにどこか底深いところでリアリティがある。なんなんだ、これは。

しかもこの小説が、伊坂幸太郎のデビュー作なのだ。さらに「新潮ミステリー倶楽部賞」に応募され、受賞したという曰くつきである。コレを「ミステリー」として応募する心臓も相当だが、受賞させた審査員もエライ。

物語は必ずしも単線的には進まない。島の「現在」がほとんどだが、時折、島の「過去」、さらには主人公を追う警察官であって悪の権化のような城山のシーンが挿入される。もっとも、城山の造形がすさまじい割りに最後があっけないのは、いささか拍子抜けだった。おっと、これって「ネタバレ」か。

デビュー作とは思えないほど、文章はこなれているし、構成もうまく、話のハコビもしっかりしていて、見たこともない設定なのに安心して読める。伊坂幸太郎は最初っから「伊坂幸太郎」だったのだ、ということが分かる一冊であった。