自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【480冊目】森田朗編「行政学の基礎」

行政学の基礎

行政学の基礎

思えばこの「読書ノート」の1冊目は、西尾勝著「行政学」であった。本書を読んでいて、その内容が思い出された。

その理由は、「まえがき」にあるように、本書の執筆者全員が西尾勝氏の指導を受けていたこととも関係あるかもしれないが、やはり、どちらの本も、行政学という学問領域の全体を捉え、網羅的に記述したものであるということなのだろう。ただ、西尾氏の「行政学」が単著であるのに対し本書は共著であり、そのあたりの違いはあるように思う。もうちょっと具体的に言うと、前者のほうが一冊の本としての統一感や構成の確かさがあったように思う。反面、本書は著者によるばらつきはあまり感じなかったが、それぞれの記述が別々に存在している感じで、どうしても寄せ集め感がぬぐえなかった。

1998年の刊行であり、地方分権の記述は分権推進委員会の活動を横目に見ながらの現在進行形、省庁再編前でもあって中央省庁に関する議論も微妙に古さを感じてしまうが、それを除けば内容はなかなか充実している。ただ、記述は面白いとは言い難い。というか、どの執筆者の文章もどうにも読みづらく、なかなかそのロジックに入っていけなかった。翻訳された専門書を読んでいるような印象である。そのため、300ページ少々の分量にも関わらずなかなか読み進められず、読んでも内容が立体的に頭の中に入らないという状態が続いた。読み方が悪い(というか、雑)なのかもしれないが、同じようなコンディションでも西尾氏の「行政学」はすんなり入ってきたので、やはり本自体の違いもあるのではなかろうか。