自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【137冊目】上山信一「だから、改革は成功する」

だから、改革は成功する

だから、改革は成功する

「改革屋」を名乗り、40件に上る企業・官庁等の改革を手がけてきた「改革のプロ」による、実践的な改革論。

内容は民間組織から官庁、地方の役所まで多岐にわたり、組織改革に通底する問題点と解決方法を、明快な文章で明らかにしている。組織の特性や改革の内容によってトップダウンボトムアップを使い分ける発想、外部者を入れるタイミングとノウハウ、改革の内容を「現場でできるもの」から「トップの決断が必要なもの」までの3段階に分け、個々の問題点がどのレベルにあるのか明らかにする必要性の指摘など、非常にきめの細かい、かつしたたかな内容となっている。

また、若手や女性、現場の声を重視することの大切さ(高学歴・管理畑のエリートばかりのチームによる改革は必ず失敗する、という)、改革の前段としての目標設定が重要であり、特に行政組織の改革にはそこを誤っている例が多いという指摘もうなずかされるものがある(例として、手段であるべき「道路公団の民営化」が目的としてすりかわってしまったケース、存続すべきかどうかの意志決定が必要なミュージアムの改革を現場レベルの解決に委ねてしまったケースなどが紹介されている)。

著者はただ闇雲なだけの改革屋ではないということが、本書からははっきりと伝わってくる。大切なのはなぜ改革するかという動機であり、その前段としての哲学であり、それを全員に知らせ、認識を共有することである。しかし、いったん改革が必要であるとなれば、取引や駆け引き、外部からのゆさぶりなど、あらゆる手段を使って改革を成し遂げようとする。改革はマキャべリストでなければ務まらない、ということもいえる。

面白かったのは、組織内に、組織横断的な「改革ドリームチーム」を作るための方法論。組織というものの難しさ・面白さや、それを構成する個々の人間に対する深い理解がそこには息づいている。自分の役所でドリームチームを作るとしたら誰だろうかと、想像をめぐらせながら読むと一段と楽しかった(自分は真っ先に候補から外れそうだが・・・・・・)。読みやすいが刺激的で、ヒントが山のように転がっている本である。