【138冊目】田口ランディ「縁切り神社」

- 作者: 田口ランディ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2001/02
- メディア: 文庫
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表題作を含む12の短編が収められている。
ほとんどの短編が、男女の間を描いている。それも、別れた彼(彼女)との再会や、腐れ縁的なつながりの話が多い。いわば、「縁切り」ができない男女や、「縁切り」をしたが再び出会ってしまった男女の話である。そう考えると、短編集のタイトルに「縁切り神社」をもってきたのは絶妙というほかない。
ある短編では、「私」は、ひどい別れ方をされ、恨み続けてきた相手に出会う。しかし、本心とは裏腹に、出てくるのは愛想の良い言葉ばかりであり、その中で相手をいまだ憎からず思う自分に気づいて愕然としたりしている。そういった、人とつながることの辛さや苦しさを作者は生々しく描写する一方で、その奥にあるある種の救いについても光をあてている。その「救い」が何であるかは人それぞれなのだろうが、そこに男女の間柄のもっとも深くややこしい部分が隠れているのかもしれない。
どれもとても短い話ばかりである。それだけに、男女の入り組んだ心理をすっぱりと切り取り、その断面図だけを鮮やかに示すものが多い。人はとてもイノセントで、やわらかな傷つきやすい部分を心の奥のほうにもっている。だからこそ、時には強がってみせたり、恨みやねたみで心の外殻を固めたり、世間ずれしたすれっからしの顔をしてみせたりするのかもしれない。単なる恋愛小説ではない、男女の精神の深みをえぐる傑作短編集。