自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2391冊目】山岸涼子『黒鳥 ブラック・スワン』

 

黒鳥―ブラック・スワン (白泉社文庫)

黒鳥―ブラック・スワン (白泉社文庫)

 

 

映画の「ブラック・スワン」とは別。念のため。でもどこかモチーフは似ている。

人間の心のダークサイドをえぐる短編4作。若い女にパートナーを奪われる女の嫉妬を描く「黒鳥」、妻を亡くした男と再婚したかつての浮気相手に因果がめぐる「貴船の道」、実の父からの性的虐待を描いた驚くべき作品「緘黙の底」、息子と密着し過ぎて息子を「食べて」しまった母親を描く「鬼子母神」。

一番驚いたのは、平成4年という早い段階で、父から子への性的虐待を描いた先駆的な「緘黙の底」か。「鬼子母神」の描く母子密着も、当時すでに話題となっていたが、今や社会問題となっている。その背景にあるのは、父親の不在。30年近く前から、日本の家族や男女が抱えている危機は何も変わっていないという、そのことに愕然とする。