自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【本以外】映画『新聞記者』を観てきました

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ミニシアターだけどほぼ満席。それだけでなく、なんというか、観客の熱気が凄かった。当然みんな静かに見ているんだけど、映画が進むにつれて画面に向かう集中力、熱量が上がっていくのを感じる。質の悪い映画だと、中盤あたりからなんとなく空気が緩んでくるのだが。

それほどに、これは「映画」としての出来がいい。内閣を揺るがすスキャンダル、責任を取らされた官僚の自殺。圧倒的な展開に呑まれるうちに、突然思い出す。この映画が、現代の日本の「現実」をベースにしていることに。当たり前に見えていた周囲の風景が、映画館を出る時は、ホンマモンのディストピアに変わっている。

特に悪辣なのが内閣情報調査室だ。「レイプ事件のもみ消しを告発した女性と野党とのつながりを捏造し、ハニートラップという筋書きをつくれ」「与党ネットサポーターを動かして、内閣寄りの情報を拡散させろ」「官邸前のデモに集まっている一般人の写真からそいつらのことを調べろ。あいつらは犯罪者予備軍だ」等々、ええと、あなたたちは「公務員」ですよね。国民のために働くのが、あなたたちの仕事ですよね。

同じ公務員として恥ずかしくも情けなくもなるが、『シン・ゴジラ』で官僚の活躍に手を叩いていた諸君、これがこの国の現実だ。そのことに目をつぶり、大甘の投票行動を繰り返してきたわれわれ国民が、こんなとんでもないディストピアを作り上げてしまったのだ。

奇しくも米ニューヨーク・タイムズが、日本を「独裁政権のよう」だと指摘する記事を掲載した。

headlines.yahoo.co.jp

日本はこれからどこへ行くのか。いや、われわれは日本を、どこに行かせようとしているのか。7月21日の参議院選挙で、その答えは出るだろう。安倍総理はなんども「悪夢のような民主党政権」という。だが真の悪夢は、覚めるまでそれと気づかないものなのだ。この映画は、われわれが渦中にいる悪夢を可視化するために、その実態をスクリーンに投影した作品なのである。