自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2252冊目】スティーブン・スローマン、フィリップ・ファーンバック『知ってるつもり 無知の科学』

 

知ってるつもり――無知の科学

知ってるつもり――無知の科学

 

 

まずは一つ、質問を。あなたは、トイレの水が流れる仕組みを知っているだろうか? 一般的な水洗トイレでOKだ。

では、2つ目の質問。その仕組みを、実際に説明してみてください。

ここで、もう一度質問しよう。あなたは、トイレの水が流れる仕組みを知っているだろうか?

このような問い方をすると、最初の質問で「分かっている」と答えた人の多くが、最後の質問では「知らない」と答えるという。別に、最初は答えられないからごまかしたというワケではない。多くの人が、トイレの水が流れる仕組みを「わかっているつもり」になっていただけなのである。

同じことが、いろいろな事例にあてはまる。地球温暖化のメカニズムはどうだろう。グローバリズム保護主義についてはどうか。リモコンを押すとテレビがつく仕組みから、法律ができる仕組みまで、この世の中は「知っているつもりだが、実はよく知らないこと」に満ちあふれている。

本書は、この「知らないこと」自体を非難する本ではない。私たちの生活を取り巻く事柄だけでも、すべてを知ることはおそらく不可能だ。問題は、私たちが「無知を認識しない」ことのほうなのである。

ソクラテスは言った。「あなたは無知だが、自分が無知であることを知らない。私も無知だが、自分が無知であることを知っている」 本書はこの偉大な言葉をめぐる一冊であると同時に、さらにその先、そもそも「知識」とは何か、「賢い」とは何かという問いに正面から答えようとした本である。キーワードは「知識のコミュニティ」。「知」とは、実は個人の中にあるものではなく、個人と個人の「あいだ」にあるのである。