自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2253冊目】南直哉『老師と少年』

 

老師と少年 (新潮文庫)

老師と少年 (新潮文庫)

 

 

けっして、難しい言葉は使われていない。読んでいても、分からないという感じはしない。でも、分からない。分からないのが、どこか心地よい。

こういう読書体験はなかなかない。答えより、問いの中に真理がある。老師に対して尋ねる少年の言葉の中に、すべてがある。

老師もまた、答えを与えるわけではない。問いはさらなる問いをもって返される。問いに対する別の問いに、答えを超える何かがある。

「人はなぜ死ぬのか。なぜ生きるのか」 

 

「自分とは何か。自分であるとはどういうことか」

 

厨二病と言えば言える。そんなこと、考えたって答えは分からない、と言えば言える。だが、その問いに対して真摯に問いを返し、言葉をめぐらせ、その果てにたどりついた一言の深さと重さたるや。だが、それだけをここに引用するのは、意味がない。少年と老師の言葉のやり取りを最初から追って行かなければならない。

ひと言だけ言っておきたい。厨二どころか四十歳を過ぎて、私は本書の「結論」に、深く納得した。この本にもっと早く出会っておけば良かったと、痛切に思った。だがひょっとしたら、私が中学生の頃に本書に出会っていても、その結論には納得しなかったかもしれない。今だからこそ、心の奥底にその言葉が響いたのかもしれない。

読み返すたびに新たな発見があり、新たな問いが見つかる。これは、私にとって永遠の一冊になりそうだ。