【744冊目】マーシャル・マクルーハン他『マクルーハン理論』
マクルーハン理論―電子メディアの可能性 (平凡社ライブラリー)
- 作者: マーシャルマクルーハン,エドマンドカーペンター,Marshall McLuhan,Edmund Carpenter,大前正臣,後藤和彦
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2003/03
- メディア: 単行本
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信じられないことだ。本書が最初に出版されたのは、1960年。日本でも67年には『マクルーハン入門』と題して刊行されている。つまり本書は40〜50年ほど前の本なのだ。
確かに、本書で取り上げられている「メディア」とは主にテレビであり、PCやインターネットなど、その片鱗すら見当たらない。しかし、そのテレビについて述べているマクルーハンらの言葉は、今でも通用するものが多い。いや、当時よりむしろ現代のほうが、通用する局面が多いのではなかろうか。
そもそも人間は、文字を読むようになって、その思考様式が大きく変化した。特にグーテンベルク以来の活版印刷によって、「文字を読む人」は爆発的に増大した。その結果生まれたのが、文字特有の「線的な思考」。それまでの「同時的思考」では複数の要素をまさに「同時」に経験することができていたのが、文字化することで、一定の時間軸に沿った「線的」な経験に置き換わり、切り捨てられた部分は潜在意識に押し込められた。
ところが、テレビなどの新しいメディアは、文字社会以前のような同時的な体験を可能にした。人々はふたたび、線的で時間軸に沿った思考から解放された。さらに、テレビは世界中で同じ体験をすることを可能にした。911の衝撃は、ビルに突っ込む飛行機のショッキングな映像とともに、まずテレビによって世界中に瞬時に共有された。
教育もテレビによって大きく変わる。そもそも現代の小さな子供は、就学前にすでにテレビによる莫大な情報にさらされており、全的で無文字的な体験をたっぷりしている。学校での教育はまずそのことを前提として行われなければならない。