自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【510冊目】出石稔監修・松村亨著「夫婦別姓の婚姻届が出されたら」

夫婦別姓の婚姻届が出されたら (自治体職員のための政策法務入門 2 市民課の巻)

夫婦別姓の婚姻届が出されたら (自治体職員のための政策法務入門 2 市民課の巻)

第一法規によるシリーズ第2巻だが、刊行は確か本書が最初。「福祉課の巻」がすでに刊行されており、「総務課」「まちづくり課」「環境課」の続刊が予定されているらしい。まずは、出版不況のなか、こういうシリーズの企画・刊行に踏み切った第一法規さんの英断(暴挙?)を讃えたい。

抽象的な政策法務論とは違い、本書は徹頭徹尾、具体的な「現場」レベル、個別事例レベルから離れず、そこで生じるいろいろな問題を政策法務の視点から見直すものとなっている。特に本書は市民課が舞台であり、いわば役所でもっともありふれた窓口業務を扱っているだけに、政策法務が役所の仕事にいかに身近であるかを明らかにするにはぴったりである。そしてもうひとつ、市民課という部署が、戸籍や住民登録、印鑑証明など、住民にとってものすごく重要なモノを対象としていることも忘れてはならないだろう。本書で出てくる事例も、命名をめぐる問題や転入届拒否、同姓の婚姻など、当事者にとってみればきわめて深刻な問題ばかりである。さらに、市民課の業務には法定受託事務、法律に基づく自治事務、条例に基づく自治事務などが渾然一体となっていることも、政策法務の視点からはポイントになる。

会話がやたらに堅苦しくこなれていないきらいはあるが、総じて面白く、わかりやすく書かれた本であり、具体的な事例と政策法務の考え方が実にうまくつながっている。非常によくできた本である。戸籍や住民記録、印鑑証明など、自治体業務に幅広くかかわる分野を扱っていることもあり、そのあたりの、門外漢にはなかなか見えづらい仕組みや事情がわかるというメリットもある。また、民間委託についてもかなりのウェイトを置いて解説してあり、参考になる。続刊が楽しみなシリーズである。