hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【461冊目】東国原英夫「知事の世界」

知事の世界 (幻冬舎新書)

知事の世界 (幻冬舎新書)

東国原宮崎県知事といえば、今や日本一有名な知事であろう。本書はその知事自らが筆を執り、自らの選挙から組織改革、行政活動などを広く語った一冊。

前から薄々見聞きして知ってはいたが、読んで再確認できたのは、この人はただの「タレント知事」ではない、ということだ。それも、2つの面からそう言える。第一は、元々政治への指向性はあったようだが、早稲田の政経で行政や地方自治を学び、自身もそれなりの知識をもっていることに加え、選挙ではシンクタンク「政策過程研究機構」のバックアップを得て*1マニフェストを作成したという点。つまり、知名度だけで政治家になったわけではなく(選挙で知名度が大きく作用したことはあるだろうが)、それなりの知識や素養、さらには現在の政治に対する危機感をもって登場した人だ、ということだ。そうでなければ、なぜマニフェストなど作成するものか。そして、その知識や素養は実際に組織改革や行政手法に反映されており、マニフェストも県の総合計画にきちんと落とし込まれ、実行に移されている。これまでの「タレント知事」で、こんな人はいなかった。だいたいは行政サイドや既得権益層に取り込まれるか、あるいは無知のまま暴走して政治や行政を破壊的な混乱に陥れるだけである(今でいえば某府知事がそれにあたるだろうか)。宮崎県民はまことに得難い知事を戴いたものである。

もうひとつ、ただのタレント知事とこの人が違うのは、「タレント」という付加価値を知事の仕事に活かしているというところである。意外なことに、これまでのタレント知事にはこういう人もいなかったように思う。これまでは、タレントとしての知名度は得票の手段ではあっても、それを当選後に県のPRに活用し、ここまでの成功をおさめたのは東国原知事が初めてではなかろうか。これはテレビという特性を知り尽くした強みであろう。テレビに振り回されず、逆に手玉に取るようにしつつ、県のPRはきっちり遂行する。小泉首相のようなワンフレーズ政治とも違う、言葉を尽くす場面とそうでない場面をきっちりと使い分け、道路特定財源等については言うべきことを言い、マンゴーや地鶏のPRでは一転して芸人魂が顔を出す。まったく、うまい。

国政への転身も取り沙汰されているが、個人的には、この人には知事を続けてもらいたい。個別の考え方には同調しかねる面もあるが、こういう知事がどんどん増えれば、少なくとも国にばかり向いたマスコミや「識者」らの目を地方にも向けることができるだろう。本当の地方分権とは、意外にこういうところからはじまるのかもしれない。

*1:本書の記載に従ったが、この点やや疑義あり。詳細は同機構HPを参照