hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【61冊目】三橋良士明・榊原秀訓編著「行政民間化の公共性分析」

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構造改革」「規制緩和」の流れの中で推進されつつある、さまざまな「行政民間化」の動きに対して、複数の論者が、主として批判的な立場から検討を加えた本。前半は、公的役割と民間化の位置づけについてどちらかといえば大づかみに総論を提示し、後半は指定管理者、特区制度、地方独立行政法人市場化テストなどの各論となっている。 郵政に代表される公的部門の民営化、規制緩和による参入障壁の撤廃、市場化テストによる強制的な官民競争入札など、「官」と「民」の役割分担はかつてなく曖昧なものとなっている。しかも、その導入過程をみると、「民営化・民間化=効率化・サービス向上」という図式が十分な検討なく前提とされ、「公」とは何か、公共とは何かについて、掘り下げた議論がなされたとは思えないように感じられる。本書はいわば、こうした風潮へのアンチテーゼとしての批判を形成している。むろん、こういった前提が安易に信じられてしまうほど、われわれ公務員の業務が非効率的かつ低サービスであったことも事実であり、その点については反省しなければならない。しかしながら、だからといって、これまでの公的業務を、どこまで効率化とサービスレベルという2本のモノサシだけで評価できるのか、そもそも公共、公とは何かといった、これらの問題を本質的に検討しなくてよいということにはならない。 また、民間化がかえって「民」の自由度を制約し、自由な経営を阻害するケースもある。この点についても十分な検討が加えられなければならない。民間化について盲点となりやすいポイントのひとつは、「民」を単なる行政の代替手段として都合よく考えてしまい、その民間組織独自の論理や都合を見落としてしまう点だ。今後の民間化に関する議論では、単なる効率化のための道具ではなく、「民」の立場や論理を尊重し、いわば官と民がwin−winの関係を形成していくための検討が必要になってくると思う。そんなことを、本書を読みながら考えた。