【46冊目】宇賀克也「ケースブック情報公開法」
- 作者: 宇賀克也
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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情報公開法・条例に関する判例とその動向を論じた本である。第1部は大きなテーマごとに主だった判例・裁判例をまとめて相互比較を行い、第2部では個々の判例等の概要をまとめている。
判例の重要性は行政法一般に言えることであるが、情報公開法(条例も含む・・・・・・というか、実際に問題になっているのはほとんど地方自治体の情報公開条例に基づく処分である)における判例の重要性は際立って高い。
その最大の理由は、情報公開をめぐる裁判のほとんどで焦点となる、いわゆる「不開示情報」の規定の抽象性の高さにある。したがって、情報公開法を実質的・実務的なレベルで理解するには、条文だけではとても足りず、本書にまとめられているような主要な判例についてもある程度知っておかなければならない。このあたりの事情は、同じく抽象的な条文が並ぶ憲法とも似たところがある。
また、分かってはいたものの本書を読んで改めて痛感したのは、情報公開についての知識や考え方というものは、当然のことながら情報公開担当者だけが知っていればよいというものではなく、全職員がある程度の見識を持ち、その存在を前提として日々の業務に携わらなければならないということである。情報公開についての知識はいまや行政運営上の「常識」に属するといってもよい。
もうひとつ重要なのは、情報公開をめぐる争いのうち本当に難しいのは、巷間いわれるような都合の悪い情報隠しではなく(そういう情けない例もあるが)、むしろ公開によって第三者の利益・権利が損なわれるという場合であるということである。契約に付随する企業情報の開示などは典型例であるが、いずれにせよ単純な議論ではない。そのあたりの裁判官の考え方は、司法と行政の違いこそあれ、対立する利益の調整という点で学ぶべき点が多いように思う。