自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【45冊目】玄侑宗久「禅的生活」

禅的生活 (ちくま新書)

禅的生活 (ちくま新書)

現役の僧侶であり芥川賞作家という異色のプロフィールをもつ著者が書いた、禅の世界についての案内である。

この本は、禅的な「ものの見方」を知ることで、日々の生活を楽にしていこうという方向性で書かれている。基本的には、私を含めた禅のシロウトを相手にした本なので、さまざまな禅の世界の逸話や具体例、さらには最新の脳科学の知見まで取り入れつつ、いくつかのキーワードに沿いながら分かりやすく「禅」というものの考え方、ものごとの捉え方を説明してくれている。そのため、全体を通してとても分かりやすい。また、なるほどと思える発見もいくつもあった。

さらに、キーとなる言葉は太字で記されているが、これがまた、禅に特有の、一見カラッとしているが、つきつめようとすると底の見えないような言葉ばかりであって、なんともいえない味わいがある。だいたい、禅の世界自体、説明し切れてしまう部分はある意味ほんの表層であり、実際には、本などでは扱いきれない、実践を通してのみ達しうる領域というものがある(らしい)。本書では、そのあたりの事情についてもちらりと窺うことができ、安易に理解できた気にはさせてくれない。そのあたりは本職の僧侶ならではの書き方といえるだろう。