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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1624冊目】シェリル・サンドバーグ『LEAN IN』

組織・仕事・公務員

女性の社会進出は、なぜなかなか進まないのか。なぜ「男性は仕事、女性は家庭」のようなステレオタイプから抜け出せないのか。なぜ多くの女性が、出産を機に仕事を辞めることを「当然」のように思われ、また自らも考えてしまうのか……

著者は、2つの障壁の存在を指摘する。ひとつは「外なる障壁」、つまり制度や周囲の偏見、差別といった外部の障害だ。もうひとつは「内なる障壁」。こちらは女性自身の内部にある自信のなさ、自己主張の少なさ、自分から身を引いてしまう傾向のことだ。

両者はニワトリとタマゴの関係にある。「ニワトリ」は、女性が出世して指導的な役割を果たすことができれば、外の壁を打ち崩すことができると考える。「タマゴ」は、まず外の壁を取り壊さなければ、女性は出世できないと説く。

どっちも正論だが、著者が本書で注目するのは、女性自身の内面的な要因だ。男性と同じテーブルについて議論に加わること、自信をもつこと、遠慮せずトップを目指すこと、つまりは前向きになって、まずは「一歩を踏み出す(LEAN IN)」ことである。

もちろん人生に対する価値観は多様であり、本書は何も、女性全員が出世レースに加わるべきだと説くワケではない。だが、女性がある程度権限のある立場にならないと、制度や職場風土を変えていくことは難しい。だから著者は、あえて「女性よ、大志を抱こう」(p.237)と呼びかける。

本書は第一に、働く女性たちのために書かれた本だ。著者の実体験やさまざまなデータが豊富に盛り込まれ、悩めるワーキングウーマンのためのヒントが詰まっている。もちろん著者の立場やキャリアは尋常ではない(世界銀行、アメリカ財務省マッキンゼー、グーグル社などを経て現フェイスブックCOO)が、内容の多くはもっと仕事上のポジションの低い女性にも当てはまるので、心配無用。むしろこれほどのキャリアの持ち主でも、女性であるがためにこんなに苦労をしてきたのか、ということに驚かされる。

しかし、同時に本書は、男性こそ読むべき一冊とも思える。多くの働く女性がどんな思いをして、どんな悩みや矛盾や苦労を抱え込んで仕事をしているのかが、たいへんリアルかつ的確に分かる(なにしろプレゼンテーション能力は抜群である)。特に男性が家事を分担することが、女性の社会進出にどれほど重要であるか、本書を読むと身にしみてわかる。

「私たちは多くのものを勝ち得たけれども、今日なお女性も男性も真の意味での選択肢はもっていない。パートナーが家事や育児を分担するようになり、そして雇用主と同僚から理解と協力を得られるようになるまで、女性に真の選択肢はない。と同時に、家事や育児を引き受ける男性が理解と尊敬を得られるようになるまで、男性にも真の選択肢はない。機会の平等は、その機会の活用を誰もが奨励され応援されるようになったとき初めて真に実現するのであり、そのときこそ男も女も能力を思い切り発揮することができる」(p.233)


この手の本にはいい加減に描き散らされたジャンク本が多いが、本書は違う。相当「本気で」書かれているし、内容も充実している。アメリカと日本の違い、フェイスブックやグーグルと公務員の違いはあるが、それを割り引いても読む価値はある。

ただ、いただけないのは邦題だ。ハリウッド映画の邦題じゃあるまいし、『LEAN IN』そのままってのはないでしょう。本文の翻訳は非常にクリアで素晴らしかっただけに、これはもったいなかった。