自治体職員の読書ノート

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【1412冊目】渡辺潤『モンタージュ』

モンタージュ(1) (ヤンマガKCスペシャル)

モンタージュ(1) (ヤンマガKCスペシャル)

ヤンマガ連載中のマンガである。現時点で単行本が8巻まで出ているのを一気読みした……というか、途中で読むのを止められなくなった。

サブタイトルに「三億円事件奇譚」とあるとおり、例の三億円事件の真相を絡めたサスペンス仕立てのストーリーなのだが、あくまで中心となる舞台は、現代。以前、瀕死の元刑事に「お前の父親は三億円事件の犯人だ」と言われた高校生、鳴海大和とその幼なじみの小田切未来が、殺人の嫌疑をかけられ逃亡しつつ、過去の秘密に向かっていくという逃亡劇+謎解きの仕立てになっている。

そんなの警察に駆け込めばいいじゃん……と思いきや、過去の事件の裏の真相を知っており、主人公を追い詰め、殺そうとしているのが関口というクレイジーな刑事で、この関口の描き方がものすごく狡猾・邪悪なので、二人が警察から逃げ回るという設定に無理を感じない。

高校生離れした二人の機転でギリギリのところをすり抜けていく逃亡劇は実にスリリングで、しかも逃げる一方ではなく、同時に謎解きにも向かっていくというのがまた面白い。謎が謎を呼ぶストーリー展開、「誰も信用できない」中での虚々実々の駆け引き、二重三重の仕掛けと罠の巧妙さ、どれをとってもエンタメの王道ど真ん中である。

三億円事件という実際の事件をネタにした小説やマンガは少なくないが、個人的には、こういう過去の未解決事件をミステリの核にもってくるのはかなりリスキーな試みではないかと思っている。実際にあった事件という制約もさることながら、未解決事件につきもののロマンのようなものがどうしてもつきまとっており、よほど意外性のある真相でないと「事実に負けて」しまうのだ(イギリスの「切り裂きジャック」ものなどにも同じことがいえる)。

真相はまだ明かされていないので「モンタージュ」がその高いハードルを超えられるかどうかまだまだ分からないのだが、いろんな過去の「ほのめかし」や伏線の張り方を見ている限り、ラストには相当期待してよさそうだ。そんなことを言うとまた作者にとってもハードルが上がってしまうのかもしれないが、おそらくここまでシナリオを作り込んでいるからには、すでに真相もまた周到に準備されていることだろう。

グロやエロも「ヤンマガレベル」ではあるがしっかり按配されており、今後が楽しみなマンガである。絵が多少拙いところもあるが、ストーリーの加速がそういうアラを吹き飛ばしてしまうので心配無用。個人的には熱血漢の若い警官、水原のキャラがだんだん立ってきて、今までのような計算ずくとは違う展開が期待できそうな気がする(ただこの人、どこかで早々と殺されてしまうような気もするが……)。それはともかく、まずは9巻の発売が楽しみだ。