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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1369冊目】村田沙耶香『ギンイロノウタ』

ギンイロノウタ

ギンイロノウタ

表題作と「ひかりのあしおと」の2編を収める。

どちらの作品も、読んだ後にべったりとまとわりつくような印象が残る。内気で無口、ちょっと変わった女の子は、クラスに一人やふたりはいたものだが、その内面がこんなにすごいことになってるなんて、知らなかった。

この人の小説ははじめて読んだが、これは、相当なモノをもっている。思春期のあの捉えどころのないドロドロした感覚をつかみだすのが異常にうまいし、相当な「生きにくさ」を背負って生きている女の子の外面と内面のギャップを描き出す手際もあざやかだ。

だいたい、黒板を指すのに使う「指示棒」で自慰をするとか、折り込みチラシから男の人の目玉を切り取って押入れの天井にびっしり貼るとか、どうやってそういう異様でしかも「ありそう」なディテールを考え付くんだろうか。想像を絶している。

そもそも女の子の内面感覚自体、男のワタシにはよくわからないが、中でも一番よくわからんのが本書に出てくるような「おとなしくて内気でちょっとキモい女の子」だ。小学校のときなんか、ほとんどエイリアンを見るような感覚で見ていたのではないか。

それはたしかにある種のステレオタイプではあるのだが、その内面をここまでリアルに、えぐるように描いた小説はなかなかないのではなかろうか。読んでいて、なんだか心の中というより、女の子の内臓そのものを内側から見せられているような気がした。

何か理解不能な事件が起きると、私たちはカンタンに「心の闇」というコトバを使う。だが、それがどんなものなのか、リアルな感触としてわかっているわけではない(だから「闇」なのだ)。本書は少なくとも、そのある一端を理屈ではなく感覚レベルで伝えることに成功している一冊だと思う。怖いモノをもった作家が出てきたものである。