自治体職員の読書ノート

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【755冊目】『保育所民営化が住民の大反対にあったとき』

自治体職員のための政策法務入門 3 福祉課の巻 保育所民営化が住民の大反対にあったとき

自治体職員のための政策法務入門 3 福祉課の巻 保育所民営化が住民の大反対にあったとき

『自治体職員のための政策法務入門』第3巻。すでに第5巻まで刊行されているが、読んだのはこれが2冊目(前回は「市民課の巻」)。

前回と著者は違えど、相変わらずのお堅い文章、抽象的な会話、理念先行の内容だが、日々の具体的な事例をどう政策法務というフレームに「落とし込む」のか、という点は参考になる。

特に、「法的対話」の実例を示した「ことばの裏を読めますか」の章は面白い。法的対話というと法廷での弁論のような論理主張型のものを連想してしまうが、むしろ「傾聴」こそが先立つべきであること、人間は「感情で動く」ことを前提として対話に臨むべきということ、といった指摘には大賛成。カウンセリング・メソッドから見ても妥当なものである。

ただ、それ以外ではいろいろ気になる点が多い。特に不満だったのは、せっかく生活保護行政を扱っていながら、いわゆる「ストリート・レベルの行政職」であるケースワーカーの活動をはじめとした、現場の苦労や矛盾と政策法務の関係について、現場の視点からあまり触れられていないこと。ケースワーカーに限らず、民生委員、ホームヘルパー、施設職員、保健師等々が、福祉の現場では主役となる。福祉における政策法務の問題とは、彼ら「現場」の事情に「法務」をいかに寄り添わせていくか、という問題であると思うのだが……。欲なのかもしれないが、もうちょっと、現場感覚と法的感覚のぶつかり合いがみたかった。

もうひとつ、細かいが気になったこと。居酒屋で職員が具体的なケースについて愚痴をこぼすシーンがあったが、誰が聞いているかわからない居酒屋で、そういうことをするものではない。われわれの実際の飲み会では、会場が区外であっても、話す内容にどれほど気を遣っていることか。架空の事例とはいえ、こんなシーンを書いた著者と、それを通してしまった監修者の「自治体職員感覚」を疑う。