自治体職員の読書ノート

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【737冊目】スラヴォイ・ジジェク『ラカンはこう読め!』

ラカンはこう読め!

ラカンはこう読め!

本書は、精神分析学者ジャック・ラカンの「解説書」である。といっても、そのために取られているアプローチはちょっと変わっている。著者は、ラカンの難解きわまる理論や用語をひとつひとつ説明するのではなく、具体的なケース(映画、小説、現実の政治など)をラカン的アプローチで解釈することにより、結果としてラカンの思想を「反射的に」描き出そうとしているのである。

で、それならこれを読んでラカンがわかったかというと、実はよくわからなかった。著者が取っているアプローチの独自性、切り込み方の鋭さはわかるのだが、それをラカンの思想のあらわれとして読み解くことができなかった、といってもよい。ただ、個々のトピックについてみれば、ラカン的なアプローチがいかなるものであるのかは、ちょっとだけ察しがついたような気がする。

たとえば、「他者」について。ラカンの「他者」には、通常の他人である「小文字の他者」と、より一般的な「大文字の他者」がある。この「大文字の他者」の存在が、実は自己の無意識の形成に寄与しているという。ここには、完結した自己という想定はない。自己はその裡に他者をはらみ、他者に照らされるようにして自己が存在する…おそらくは、そういうことらしいのである。

読み方がちょっとまずかったかもしれない、という反省はある。入門書として、かなり気軽なスタンスで読んでしまったのだ。そして、それでも書いてあることがそれなりに理解できるので、わかった気分になって通読してしまった。もし本書からラカンの思想を摘出したければ、もっと分析的に、本書の文脈の中に埋め込まれているラカンのエッセンスを切り分けるようにしてじっくり読まなければならなかったのかもしれない。