自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【711〜712冊目】中谷宇吉郎『雪』 マイケル・ファラデー『ロウソクの科学』

雪 (岩波文庫)

雪 (岩波文庫)

ロウソクの科学 (角川文庫)

ロウソクの科学 (角川文庫)

これからしばらく濫読を謹んで、本を読む際のマップ、言うなれば自分の頭のなかの「知図」を整理してつくりなおすための工事を半年ほどやろうかと思っている。われながらあまりにも選書がテキトーで、しかも読むときには「内容」にこだわりすぎていることが気になるためだ。もちろん内容も大事だが、それより本を触媒に、知の「たな卸し」を一度きっちりやってみたい。今回はそのためのスタート2冊。テーマは「科学」である。

さて、これは科学の世界を感じるにはうってつけの、古典的名著2冊。

『雪』はひたすら雪を論じた中谷宇吉郎氏の文章。文章はとても淡々としているが、行間に雪に対する愛着がにじみでている。地表に達するまでの雪を対象とし、その結晶ごとの分類を行い、さらには雪を通じて天空の秘密を探ろうとする。なぜなら、雪は空高くでつくられ、したがって空の秘密をその中に抱え込みながら、地表まで下りてきているのだから。

なお、「雪は天からの手紙である」という言葉は本書に出てくる著者の名言であるが、これは単なるポエティックな意味だけで書かれているのではない。空高くがどうなっていて、何が起こっているのががわからない中で、雪はいわばタイムカプセルのように、空の上のほうで何が起きているのか、その秘密を抱えたまま降ってきているのだ、ということのようである。しかし、それを解き明かすには、われわれのほうで暗号を解読しなければならないのだ。

一方『ロウソクの科学』は、著名な化学者ファラデーが行った有名なクリスマス講演。一本のロウソクにはじまって化学の基礎を往来する画期的な講演記録である。これもまた、科学の魅力を伝えるには最適の一冊。分かりやすく面白い語り口、たくさんの実験を織り交ぜた自由自在な展開。「口をついてでることばのすべてが科学」と解説にも書かれているが、確かにそのとおり。なかなかこういう講演のできる人が見当たらないのは残念なことである。