自治体職員の読書ノート

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【402冊目】高村義晴「地方自治体の公共意思決定」

地方自治体の公共意思決定―実践的プロセス志向

地方自治体の公共意思決定―実践的プロセス志向

タイトルの通り、自治体の「公共意思決定」のあり方を論じた本。

決して悪い本ではないと思う。基本的なテーマは網羅されている。説明はやや硬いし、言葉がこなれていない感はあるが、それほどひどくはない。論理がちょっとつかみにくいところもあるが、これももっとひどい本はたくさんある。目配りも広いし、具体的な事例もそれなりに挙げられている。悪くはないのである。

しかし、なぜだか本書は読んでいてあまり入っていけなかった。理由はよくわからない。読み方が悪いのかもしれないが、どうも大きなフレームが見えてこない。個々のロジックも今ひとつつかみきれず、どうしても通り一遍で、抽象的なのだが妙に飛躍やずれがあったりする。結局、消化不良のまま読み終えた。もっとも、途中で投げ出さなかったのは、それでもところどころ、なかなか重要で示唆的なことが書かれているからである。

意思決定の精神というところでは、歎異抄をひいて「他力を恃む」としているのにびっくりした。他力と意思決定にどういう関係があるのかと思うが、要するにどのような公共意思決定にも「不可知性」や「矛盾」が内包されているのであり、そのことを意識せよ、ということらしい。

また、レトリックの面でおもしろいと感じたのは、「カミソリのような知性」などということに対して、相手が紙ならよいが、丸太のような課題に対しては「カミソリ」より「斧」が求められる、というくだり。つまり、個々の事務処理レベルで優秀であることと、大きな課題を解決する能力は違う、ということである。それを「カミソリ」と「斧」で喩えたのはなかなか巧みである。

まあ、このような感じで個々の部分には「おっ」と思わせられるところがなくもないのだが、全体的には冒頭に述べたとおりであった。著者の文章や思考方法と相性が悪いだけなのか、どうなのか。気になるところではある。