自治体職員の読書ノート

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【385冊目】伊坂幸太郎「終末のフール」

終末のフール

終末のフール

8つの連作短編集なのだが、設定がふるっている。なんと3年後に小惑星が激突し、人類が絶滅することが分かってしまっているのである。判明したのは8年前。その時はかなりの混乱があったものの、それも沈静化し、一種の落ち着きとあきらめの中で、それぞれの登場人物がそれぞれに残りの3年間の過ごし方を考え、向き合っているという状況でのエピソードである。

いささか乱暴な設定ではあるが、いわばこれは、ガンの余命宣告で自分の人生に明確なタイムリミットが置かれてしまったという設定の拡張版といえる。したがって、世界中が残りの人生の長さを自覚し、共有しつつ暮らしているのだが、そこに妙な連帯感があるのが面白い。また、残り3年で自分が(周りも含めて)死ぬ、ということはそれ自体大きな悩みであり、絶望でもあるのだが、一方で、それによって他のいろいろな悩みから解放され、自分の人生を歩むことができる、という面もあるのであって、その中でいやおうなくその人にとっての人生の「優先順位」というか、3年限りの人生で何をやっていくか、という決断があぶりだされてくるのである。そのあたりのシビアさと気楽さの奇妙な混ざり具合が、本書では実に淡々と描かれている。