自治体職員の読書ノート

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【320冊目】田村秀「自治体格差が国を滅ぼす」

自治体格差が国を滅ぼす  (集英社新書)

自治体格差が国を滅ぼす (集英社新書)

「そこまで言うか」的なタイトルであるが、内容を見ると、あながち言い過ぎとも言い切れないものがある本。

自治体全般を一般論で論ずるのではなく、「勝ち組自治体?」として千葉県浦安市など、「負け組自治体?」として北海道夕張市などを取り上げて具体的な財政状況やその背景を考察するほか、「模索する自治体」として外国人住民との共生をめざす群馬県大泉町、シャープ亀山工場を誘致した三重県亀山市、葉っぱをつかった「いろどり」で注目を集める徳島県上勝町を取り上げ、あくまで個別具体的な視点を中心に、地方自治体の現状と将来像を描き出そうとしている。

そもそも、アメリカでいえばカリフォルニア州ひとつぶん程度の国土に、これほどバラエティに富んだ地域が存在していること自体、頭では知っていても、こうして具体例として示されると圧倒される思いがする。もちろん、多様であることは良いことばかりではなく、中には夕張のように破綻してしまったところや、木更津のようにバブル崩壊で大きなダメージを受けたところ、大阪市西成区のように貧困と格差に苦しめられる地域も存在するわけであって、実態としては、多様性が「格差の拡大」の方向に作用してしまっていることがうかがえる。

本書はこうした「格差の縮小」についての処方箋も提示しているが、大切なのは、格差の縮小と多様性の存続を両立させることだと思う。この点で、国がよく作るような、地方のことを全然知らない官僚連中が考えたお仕着せのメニュー付き補助金のようなものは、そもそも的を外していると言わざるを得ない。むしろ、本書でも提案されているように、国は地方の創意工夫を尊重し、移すべき財源は移した上で、補助金を出す場合でも、地方独自の取り組みを評価し、それに必要な財源を補填するようにすべきであろう。自治体の首長をはじめ職員、議会、さらには住民が頭を絞って知恵を出し、それぞれの地方をデザインし、その地域ならではの魅力を引き出し、活性化させていくべきは当然である。