自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【575冊目】山田浩之・徳岡一幸編「地域経済学入門」【576冊目】岡田知弘・川瀬光義・鈴木誠・富樫幸一「国際化時代の地域経済学」【577冊目】中村剛治郎編「基本ケースで学ぶ地域経済学」

地域経済学入門 新版 (有斐閣コンパクト)

地域経済学入門 新版 (有斐閣コンパクト)

国際化時代の地域経済学 第3版 (有斐閣アルマ)

国際化時代の地域経済学 第3版 (有斐閣アルマ)

基本ケースで学ぶ地域経済学 (有斐閣ブックス)

基本ケースで学ぶ地域経済学 (有斐閣ブックス)

3冊読んでいるうち、2回ほど、投げ出しそうになった。

最初は「地域経済学入門」。「入門」というから易しいのかと思いきや、途中で数式のオンパレードになってしまい、全然ついていけなくなった。そういえば、大学で受けた経済学の授業がそうだった。数式アレルギーが今頃再発するとは思わなかった。

複数の著者が書いているので全部が数式だらけというわけではないが、全体的に、経済学をベースにしつつ、「地域」というファクターを重ねるというアプローチが取られているようである。もっとも、入門書ということで「地域経済学」全般を網羅的に取り上げており、扱われているテーマも多彩。数式の部分は飛ばし読みだったが、終わってみればイメージをつかむにはなかなか良い一冊であった。

2回目に挫折しかかったのは、3冊目の「基本ケース…」。こちらは長い長い「序章」がついているのだが、これが異様に読みにくい文章で驚いた。編者自らがお書きになっているようだが、他の著者と比べてもダントツの悪文。意味がつかめないというより、読むこと自体に強烈な心理的抵抗を感じた。

だが、テキストとしてはこちらもよくまとまっている。特に「基本ケースで学ぶ」というだけあって、具体的な地域を挙げてかなり突っ込んだ分析を加えており、ケーススタディとして充実している。とっかかりが悪いからと言って投げ出してはならないという実例であろう(最後までろくでもない内容の本もあるが・・・・・・)。

ちなみに、2冊目の「国際化時代の・・・」は、表題のとおりグローバル化が地域に与える影響にも触れつつ、地域経済の厳しい現状を紹介し、それに対する国の施策をかなり厳しく批判している。新産業都市やテクノポリス構想など、まさにその実例である。

もっとも、こうした国の施策がそれなりに実施された裏側には、国の提示する補助金に目を奪われて陳情合戦を繰り広げた地方自治体の存在があった。さらにその遠因をさぐると、自前の財源で地方経済を活性化することのできない地方の財政事情、つまりは地方間、あるいは国と地方の間に横たわる財源の不均衡がある。こうした不均衡状態を放置した上で、国のメニューに乗った自治体のみが手厚い財政措置を受けられるのだから、衰退の続く自治体がこれに食いつくのも無理はない。

ただ、それでなかなかうまくいかないということは、国の補助金付き施策にうかうかと乗ってもしょうがないということだろう。実際、「基本ケース・・・」によれば、国の言いなりになってもろくなことがない、と学習したいくつかの自治体が、独自の創意工夫で地域おこしに取り組み、成功を収めている。その具体的な内容は、これまでこの「読書ノート」で取り上げたまちづくり関係の書籍とも重なるが、結局は、「まちおこし」「まちづくり」の基本原則である、「地域の人々が」「地域の実情に応じて」創意工夫と試行錯誤を繰り返すことが、地域経済の活性化にも結びつくということなのだろう。

地方経済学が扱うテーマにはいろいろあるが、中でも興味深いのが都市と地方をめぐる問題であった。地方の過疎化と都市の過密化、拡大する一方の財政格差。その「解決策」とまではいえないまでも、そうなるに至った「構造」を知るためのヒントが、この地域経済学という分野にはあるように思われる。