【86冊目】長谷部恭男「憲法とは何か」
- 作者: 長谷部恭男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/04/20
- メディア: 新書
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最近、憲法改正についていろいろなところで議論されているが、この問題、さまざまな政治的スタンスやイデオロギーが絡まりあい、なかなかその本質的なところが見えてこない。本書はその中で、憲法や立憲主義とは何かという基本的なところを整理し、そこから考え直そう、というスタンスで書かれている。
憲法改正については慎重にすべし、というのが著者の基本的な立場であるが、その理由は、ありがちな「護憲派」の主張のように、憲法の価値観を礼讃し、すばらしい憲法だから守るべき、というのとは少し違う。むしろ、立憲主義というものの危うさや、憲法という存在の特質にかんがみて、安易な改正をすべきではない、というのが著者の考えのようである。憲法の内容の善し悪しではなく、憲法や立憲主義というものの性質、本質から憲法改正を考えるという点で、著者の主張は一般の憲法論とは異なる水準にあると思われる。
本書の基礎となる概念のひとつとして、国家論がある。著者は、国家とはすなわち憲法であるという。この考え方は一見奇異にみえるが、実はかなり国家というものの本質に迫ったものだと思う。(少なくとも、「國體」などというフィクションを持ち出すよりはマシだろう) 「国家とは何か」という問いは、きちんと答えようとすると非常に難しいのだが、この問いについてある程度にせよ深く考えたことのある者にとっては、著者の考えはかなり納得いくものではないか。