自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【22冊目】田中孝男・木佐茂男「テキストブック自治体法務」

テキストブック自治体法務

テキストブック自治体法務

本書は「テキストブック」とのタイトルどおり、自治体法務に関する基礎的なテキストである。同時に「法務」という観点からの地方自治論であり、行政活動論・組織論であり、きわめて具体的かつ実践的な自治体業務の現場への提言にもなっている。

どうやら、木佐茂男氏の「自治体法務入門」がベースになっているらしく、先にそちらを読んでいたほうが理解が深まったかもしれない。しかし、本書だけでも内容を理解することは難しくないと思う。

「法律による行政」あるいは「法治主義」とはよく言われる言葉だが、具体的な日々の業務においては、えてして私を含む多くの自治体職員は「法律」をわすれ、「要綱」や「通達」、果ては「慣例」、「マニュアル」に拠ってしまいがちになる。(ここでの「法律」とは、単に具体的な個々の法律・条例等に限らず、「法的思考方法」「法的意識」を含む)この本は、そのような姿勢に強く警鐘を鳴らしている。

もっとも、この本のメッセージは、単に法律を知れというにとどまらない。むしろ随所で指摘されるのは、住民のために自治体職員は何ができるのかという点であり、いいかえれば住民サービス、あるいは住民参加の重要性である。本書においては、多くの場合、法は住民統制の手段というより、自治体の運営を統制し、住民自治を実現する手段として位置付けられており、無機質な法理論の概説書ではなく、血の通った住民のための法務論となっている。

ずしんときたのは、最後の2章。それまでの冷静な筆致をかなぐりすてるようにして、法治主義には程遠い自治体や国の現状に対する怒りと絶望が吐露されている。ひるがえってわが身やわが自治体を省みたとき、そのお寒い現状がわが事として迫ってくる。 参考文献も整理され、地方自治法改正後の書籍が多数紹介されている。今後、折に触れて広げる本のひとつになりそうである。