自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【568冊目】ジェフリー・ディーヴァー「石の猿」

石の猿〈上〉 (文春文庫)

石の猿〈上〉 (文春文庫)

石の猿〈下〉 (文春文庫)

石の猿〈下〉 (文春文庫)

単発での紹介。なぜかって、ディーヴァーの小説を3冊もまとめて読むなんてもったいない! 以前は、特定の作家にはまると短期間で全作品一気読みのようなことをしていたが、最近は「楽しみは後に取っておく」ほうが良くなってきたのだ。でもあまり読まないでいると禁断症状が出てくる。今回も我慢できず読んでしまった。

ボーン・コレクター」のリンカーン・ライムシリーズ4作目。相変わらずのジェットコースター・サスペンスなのだが、今回は中国がらみのネタが多いのが特徴。中国からの密入国者をあっせんする「蛇頭」で、危険きわまりない殺人鬼の「ゴースト」が敵役、舞台はチャイナタウン、登場人物は中国人や中国関係の人ばかり。完全に「中華風味」の一冊。

サスペンスとしての出来栄えは他の作品に比べてちょっと見劣りするが、その分、中国からの密入国者たちをめぐる人間ドラマが濃厚で、味わい深い。ディーヴァーが中国関係の取材に相当力を入れたことが読み取れる。だいたい、アメリカ人の作家で、たくさん出てくる中国人の登場人物をこれだけ書き分けること自体が驚きである。特に印象深いのが中国公安局刑事のソニー・リーとライムのやり取り。西洋合理主義にどっぷりはまったライムと、東洋的で老荘的な価値観をもつリーのぶつかり合いが友情に発展し、頑固で偏屈そのもののライムが、彼にだけは心を許すのである。