自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【519冊目】松岡正剛「連塾 方法日本1 神仏たちの秘密」

神仏たちの秘密―日本の面影の源流を解く (連塾方法日本 1)

神仏たちの秘密―日本の面影の源流を解く (連塾方法日本 1)

各界の第一人者が集う「連塾」で著者が語った全8講のうち、3講をまとめた本。テーマは「方法日本」、言い換えれば「日本という方法」である。

第1講が、日本のこれまでもってきた方法論を総論的に明らかにするもので、第2講は日本神話、第3講は仏教と、神話や宗教の面から、日本のもつ「結び目」の奥にある秘密を探る。ものすごく面白く、エキサイティングな一冊である。日本の奥底に流れる根源的な「方法」を照らすことで、歴史の教科書などとは全然違う「日本」が立ち上がってくる。特に圧巻は「日本神話パンテオン構造」という、日本神話を構造化して図表化した一枚。「天地創成パンテオン」「出雲パンテオン」「日向パンテオン」の3つのステージ、さらには朝鮮創成神話とのつながりや、大和朝廷神話に至るまで、複雑きわまりない日本神話の構造をわずか一枚のチャートで見事に明らかにしている。日本人必携である。

本書を読んで感じたのは、日本を知る上では、日本に外から何が流れ込み、それがどのように変容し、定着したのか、という、外来のプロセスに着目するのがポイントであるということ。その「取り込み」と「変容」の中にこそ、方法としての日本が息づいている。日本史とか日本文化とかいうと、どうしてもそれ自体をクローズなものとして見てしまいがちであるが、それでは何も見えてこないのである。仏教などはそれが分かりやすい形で出ているが、日本神話にしても海を越えてやってきたものがたくさんあり、それが日本のルーツになっている。それは日本とアジア、特に朝鮮半島との関係そのものでもあるのだ。日本人なら知らなければいけないことが満載の、充実の一冊。続刊が楽しみ。