自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【518冊目】桜井章一「人を見抜く技術」

あまりこの「読書ノート」には書かないが、著者の本はほとんど読んでいる。私が最も影響を受けた人のひとりである。読書ノートに書かないのは、この人に対して、こんなところで偉そうに書評じみたことを書くべきではない、と思うから。前にもちょっと書いたが、私の人生はこの人の言葉を読んで、文字通り180度変わった。

本書もそういう意味ではここに書くべきではないのかもしれないが、はっとさせられる部分がかなりあり、備忘録がわりに書き留めておこうと思ったので取り上げた。そのひとつが、「できない人から学ぶ」ということ。知識や能力に関しては、確かに「できる人」から学ぶほかはない。しかし、こと人生に関しては、「できない人」をよく見ることのほうが学びが多い。しかし、もっと大事なのは、知識や能力にとらわれていると、上ばかり見て自分より「できない」人をおろそかにし、下手すると見下してしまいがちである、ということだろう。それは傲慢さに通じるし、上ばかり見ていて足元をすくわれる原因もこういうところにあるのかもしれない。

本書に限らず、桜井氏はとことん自分の言葉、自分の中から出てきた発想や考え方で語る。その「厚み」と「深み」の途方のなさがものすごい。やわらかい、温かい言葉だけに表面的にわかったつもりになれてしまうが、実はもっと奥深く、味わいがあることを語っていることに、後からはっと気付かされるのである。そのあたりも、読んだばかりの時点でこんなところに書いてしまうことをためらう一因なのかもしれない。それにしても、タイトルからすると浅薄なノウハウものに見えるが、とんでもない。その種の本を読みたがる人こそ、この人の言葉に触れるべきであろう。