【354冊目】ポール・ギャリコ「マチルダ」
![マチルダ―ボクシング・カンガルーの冒険 (創元推理文庫) マチルダ―ボクシング・カンガルーの冒険 (創元推理文庫)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51F4B83VSRL._SL160_.jpg)
- 作者: ポールギャリコ,Paul Gallico,山田蘭
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/06
- メディア: 文庫
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マチルダはボクシングが好きなカンガルー。サーカス向けの出し物のひとつだったはずが、行き違いが重なって世界チャンピオンをKOしてしまうのだが、そのチャンピオンにはマフィアの後ろ盾がついていた。しかもそのKOシーンを新聞に書きたてられてしまったことから、とんでもない大騒ぎが・・・・・・。
なんとカンガルーの「ボクサー」を主役にした奇想天外な小説。文字通り純粋で邪気のないカンガルーを中心に置いたことで、周りの人間たちの野心や欲、プライドが実にこっけいなかたちであぶりだされていく。現代(といっても書かれたのは1970年)の社会、マスコミといったものへの痛烈な皮肉が、心温まるファンタスティックな展開の中にひそんでいる。物語は「元チャンピオン」リー・ドカティとの再戦に向けて動いていく。試合を妨害しようとするマフィアと、マチルダの「マネージャー」ビミーらの対決も面白い。
とにかく、こういう小説はあまり説明するのも野暮というもの。とにかくどこを切っても面白い、上質のエンターテインメントである。