hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【274冊目】ロバート・D・パットナム「孤独なボウリング」

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

以前「哲学する民主主義」で南北イタリアの格差を取り上げたパットナムが、今度は70年代以降のアメリカにおけるコミュニティの衰退現象を取り上げ、再生のための処方箋を提示した本である。

全部で600ページ以上という大作だが、徹底したデータの積み上げと卓越したメタファー、原因から処方箋にいたる構成のうまさで読み手を惹きつけて離さない。膨大な研究結果を理路整然と配列しながら、コミュニティの衰退という焦点は決してはずさない。その筆力はさすがというほかはない。

「哲学する・・・」では最後に提示された「社会関係資本」(ソーシャル・キャピタル)という概念が、本書では冒頭から鍵概念として登場し、すべての議論はこれを中心に回っている。社会関係資本とは、大まかに言えば一般的互酬性(今与えておけば、そのうち報いがあると信じられること)と信頼性を備えた社会的ネットワークを指し、これがコミュニティの維持・発展には欠かせない要素であるとする。本書ではこれが70年代以降衰退した原因を、労働、都市のスプロール化、テレビ、世代の交代などの複合作用によると明らかにしたうえで、今後のコミュニティ再生のための解決法を示す。その際に、著者は過去の方法のすぐれた点を取り入れつつも、「昔は良かった」式の安易なノスタルジアに決して安住しない。日本でいえば、昭和30年代がいくら良かったからといって、現代の問題を解決するのに「昔に戻ろう」式のイージーな議論はしていない。むしろ近年のインターネットなどの仕組みを活用しながら、まったく新しいオリジナルの解決策を模索しようとしている。

日本でも、地域コミュニティの衰退や崩壊が取りざたされることがあるが、本書で挙げられているアメリカの事例とは状況がだいぶ異なるように思える。しかし、特に新興住宅地など、コミュニティの機能が明らかに低い地域などでは、(もちろんその地域の実情に合わせたアレンジをしたうえで)本書の処方箋を応用することは可能であろう。ちなみに本書で提示されているコミュニティ再生のための切り口は「若者と学校」「職場」「都会と都市デザイン」「宗教」「芸術と文化」「政治と政府」である。