自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【267冊目】松岡正剛「誰も知らない世界と日本のまちがい」

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義

「17歳のための世界と日本のみかた」に続き、今度は世界と日本の近現代史を扱っている。

徳川幕府の日本とエリザベス時代のイギリスからはじまり、思想や文化を合わせ鏡のように配しつつ、グローバリズムが跋扈する現代世界までを高速で一覧するものとなっている。相変わらず、その圧倒的な密度と迫力は圧巻。特に、「イギリスのまちがい」をはじめとした19世紀の列強の動きが、現代の中東、アフリカ、そしてアジアに根深く残る問題の大きな根となっていることがよくわかる。そして、その中で開国し、列強の仲間入りを果たそうとした日本の「昭和史の悲劇」に至る近代史の怒涛のような流れ。教科書では決して分からない、歴史の大きな流れを読み解くダイナミックな「視点」が、本書でははっきりと示されている。

それにしても、したたかで身勝手な列強の理屈がどれほどの「まちがい」を世界中に振りまいてきたことか。その罪の深さは唖然とするほどである。そして、その系譜は形を変えながらも、現在のアメリカの一極支配に連なっている。では、その中で日本はどうすればよいのか。著者は、日本の「苗代」を取り戻すべきだと主張する。海外の思想や成果を日本に「直蒔き」するのではなく、いったん「苗代」に移し、日本の土壌に合わせて育てていく。こうしたやり方をかつての日本は中国に対して取っていたはずなのに、今はそうなっていない。グローバリズムなど、まさに直蒔きの典型であり、それが今の日本をおかしくしている一因になっている。もちろんその背景には、アメリカと日本のパワー・アンバランス、軍事的にも経済的にもアメリカの半植民地化してしまっている日本のお粗末な現状があるのであるが。

それにしても、この「苗代」という発想は、良い。自治体現場でも、海外の先進施策や国内の他自治体の施策を導入する際、これまでは「直蒔き」的なやり方が結構多く取られてきたように思う。しかし、本来はいったんそれを「苗代」に植え替えて、それぞれの地域に応じた形で育てていくべきなのである。その意味を、われわれはもう一度きちんと考え直す必要があるのではなかろうか。