【268冊目】藤原和博「サクラ、サク」
- 作者: 藤原和博
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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ひょんなことから中学校の校長先生を1年間だけ務めることになった、中学1年生の「サクラ」の目を通して、学校現場の経営を考える本。
著者自身、民間出身でいまは公立中学校の校長を務め、さまざまな先駆的な取り組みをしている(最近では、いわゆる「夜スペ」の実施をめぐって議論を呼んだ)。本書を読むと、それらの取り組みが、「カイゼン」と「カイカク」、「リカバリー」の重要性、シンボルマネジメントや価値創造の発想など、まさに経営的思想の具現化であったことがよく分かる。そしてその思想は、企業や学校だけではなく、NPOや役所など、あらゆる組織に応用可能な要素を秘めている。
教育現場に経営の発想を、というと、中には違和感を感じる方もおられよう。しかし、実際に著者が杉並区立和田中学校で取り組んできたこれまでの改善・改革内容を見ると、たしかにドラスティックな面はあるものの、よく考えるとむしろ教育の本質に沿ったものが多く、決して的を外しているわけではないように思われる(もっとも、今回の「夜スペ」については、個人的にはあまり「諸手を挙げて賛成」とはできないものを感じる)。何より良いと思うのは、著者の方法論に組み込まれた「トライ→エラー→リカバリー」というプロセス。まずやってみてから修正をかけていくという発想である。学校をはじめ行政の弱点は、こういうことがなかなかできないことだと思う。
最後に、本書は欧米の経営の入門書や教科書に良く見られる、小説仕立てで間に解説がはさまるタイプのテキストとなっている。公的分野の経営について、こういうスタイルの本は案外珍しいように思う。これも著者ならではの発想といえるだろう。