自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【225冊目】木佐茂男・田中孝男編著「自治体法務入門」

「法務」の視点から書かれた自治体職員向けのテキストの中でも、おそらくもっとも平易で入門向けの一冊。

法務などというとずいぶん堅苦しいイメージがあるが、そもそも法律に基づく業務というのはどんな部署の自治体職員であっても避けては通れないものである。それも、何かトラブルが起きてから法律書を広げているようでは到底間に合わないのであって、日々の業務そのもののいわば通奏低音として、法的な思考方法や最低限の知識は常に必ず必要となっているはずだ。本書で強調されている、窓口などでの「法的対話」の重要性も、結局はそういうことなのだろうと思う。

本書には行政手続法や地方自治法行政事件訴訟法など行政関連の基本的な法律の知識もある程度書かれているが、同時に法的なものの考え方や業務の執行方法など、いわばソフト面に関する情報がとても充実している。しかも説明は大変分かりやすく、法律的な素養のない新人職員でもおそらく簡単に理解することができるだろう(もちろん、実際の業務をある程度知らないとイメージしづらい部分はあるかもしれない)。ご丁寧にもマンガまで載っており、まさにいたれりつくせりの入門書である。

また、複数の著者が書いているわりに全体のトーンがきれいに統一されており、通読しやすいスタイルになっているのもよい。ただ、個人的にはむしろ誰がどのパートを書いたのかが分かったほうがよかったかな、とも思う。特に本書は単なる知識の羅列ではなく、「自治体法務の観点からするとこうすべきである」といった、職員の「あるべき論」にまで話が及んでいるため、執筆者の顔はイメージしたかった。まあ、それはともかくとして、本書は特に新人の自治体職員にとっては必読書のひとつかもしれない。また、自分の職務が法律とは関係ないと思っている職員ほど、本書の利用価値は高いと思われる。