【27冊目】北方謙三「水滸伝」1〜19
Amazon.co.jp: 水滸伝〈19〉旌旗の章: 北方 謙三: 本
中国三大奇書のひとつとして著名な「水滸伝」を北方謙三がアレンジした大河小説である。
水滸伝自体についてはご存知の方も多いだろう。魅力的な人物が縦横無尽に活躍する希代の娯楽小説であり、英雄たちが干戈を交える華々しい戦いから裏にうごめく権謀術数、切ない愛の物語まで、小説のもつ要素のほとんどが詰まった大作である。これを北方謙三が原作にとらわれず自由自在に料理し、非常に完成度の高いエンターテイメントに仕上げたのが本書である。
とにかく魅力的な人物が多い。「替天行道」の旗の下、梁山泊に結集した英雄たちは、損得勘定を捨て「志」に殉ずる。臭い言葉ではあるが、そこに生粋の男の美学を感じた。作者の贅肉をそぎ落とした簡素な文体も骨太な物語にマッチしている。格好良いのである。最後はほとんどの登場人物が死んでしまうのだが、その死に様がまたどれをとっても見事である。 とにかく傑作であり、読み終えるのが惜しいほどであった。特に最終巻の戦いは息もつかせぬ展開で、圧巻の一言。