【26冊目】永田照喜治「食は土にあり」
- 作者: 永田照喜治
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2003/06
- メディア: 単行本
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永田農法」をご存知だろうか。 原産地に近い環境で、最低限の肥料で野菜を育てることで、本来その種がもっている味を最大限に引き出す農法らしい(とんでもなく簡略化した説明なので関係者に怒られそうだが)。本書はその創始者である永田氏が綴った、永田農法や日本の農業環境をめぐるエッセイ集である。
一読、思ったのは、「この人は本物だ」ということ。本書で語られている日本の農業のあり方に対する憂いや批判、より良いものを生み出す人々への賛辞、野菜に対する愛情の深さは、流行や金儲けに惑わされず、より良い農業のあり方、より美味しく安全な野菜の作り方の追求に一生を捧げてきた人ゆえの説得力に満ちている。現場にありつづけた人ならではの迫力である。
特に「農業は自然破壊だ」という言葉。農業に携わってきた永田氏の言葉であるからこそ、その重さが読み手に響いてくる。田んぼや畑の広がる風景は一見、豊かな自然の情景のようだが、考えてみれば田畑こそ自然を改変した人工物の最たるものである。
永田氏自身の中から生じた言葉ばかりであり、受け売りはほとんどない。そのため、読みやすいが、読み飛ばすことのできない実に大切な内容に満ちている。永田農法で作った野菜そのもののような本であった。