自治体職員の読書ノート

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【2227冊目】村瀬嘉代子・津川律子編『電話相談の考え方とその実践』

 

電話相談の考え方とその実践

電話相談の考え方とその実践

 

 



「原則は一回性の出会いであることを自覚して、密度高い意味ある時間であるように感性と思考力を集中する必要があること、基本的に相手を人として遇する、つまりは共感的傾聴の態度が基底に求められることは、一般相談、心理専門相談の別を問わない」(p.16)

 



ツールの発明は、新たな需要を生み出す。電話がない時代、相談と言えば面接か、せいぜい手紙しか方法がなかった。だが電話が出現したことで、「電話相談」という方法が誕生した。そして今や「メール相談」が行われるまでになっている。

本書は「いのちの電話」や災害被災者向けの電話相談、こども相談室の電話相談など、どちらかというと電話相談プロパーの対応者向けに書かれている。だが、その内容は住民対応を行う自治体職員にも十分に応用できる。例えば住民の方から電話で「今から死にます」と言われたら? いつになっても終わらない身の上相談にどう対応する? 切るタイミングを間違えてクレームになってしまったら?

窓口での対応より、ひょっとしたら電話対応の方が神経をすり減らすかもしれないと、最近思うことがある。突然かかってくる。相手の顔が見えない。周囲には相手の声は聞こえないから、クレーム化していても周囲のヘルプが得られない。切らない限り会話が続く。

本書では電話相談の特徴として「かけ手主導」「即時性」「超地理性」「匿名性」「密室性」「一回性」「経済性」「隣人性」を挙げている。こう並べてみると、電話相談にもそれなりのメリットが多いことに気づく。特に緊急性の高い相談、対面相談が苦痛な人の相談、移動に支援が必要な人の相談等の場合、電話相談が望ましい(本書p.18)。

興味深い指摘もある。児童虐待のホットラインで電話相談を始めて驚いたのは、来所相談では少なかった「虐待をしている人からの電話」の多さだったという。上で挙げた特徴でいえば「即時性」「匿名性」が功を奏しているということだろうか。また「面接相談よりも電話相談のほうが、視覚情報が入らない分、コーラー(電話のかけ手)に関するイメージが過剰になり、勝手に逆転移が誘発されやすい」(p.78)との指摘もある。もっとも、ここでいっているのは、精神分析でいう逆転移とまではいかず「相手に対する感情が沸き起こってくる」程度の意味とのこと。電話のほうが、相手との心理的な距離が取りにくいということなのだろうか。

最後に、住民からの長電話に悩まされている人に実践的な目安をひとつ。「電話での悩みの話は20分話すとあとは同じことの繰り返しになるんです。その先をどう誘導してゆけるかは相談員の力量です」(p.165) 受容的に、共感的に、でもしっかりとプロとしての対応を行うにはどうすればよいか。そのための現場でのヒントが詰まった一冊である。