自治体職員の読書ノート

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【2185冊目】宮本太郎『共生保障』

 

共生保障 〈支え合い〉の戦略 (岩波新書)

共生保障 〈支え合い〉の戦略 (岩波新書)

 



共生」がキーワードになっているが、内容としては前著『生活保障』の延長線上にある一冊だ。制度疲労状態となっている日本の社会保障や雇用制度を検証しつつ、「地域での支え合い」の事例をヒントに、あるべき社会保障の仕組みを構想する。

支え合いと言っても、多くの制度や社会の現状をみると「支える側」と「支えられる側」が分断されている。このことが本書全体を貫く問題意識となっている。住宅政策でいえば、一方の「持ち家中心主義」と、もう一方の「低所得者向けの住宅供給」。社会保障では、企業が福利厚生を担う一方、その恩恵を受けられない場合は一挙に生活保護になってしまう。さまざまな政策が両極に偏り過ぎていて、中間がすっぽり抜けている。

本書はその「中間」を考える一冊といえる。ポイントは「支える側」と「支えられる側」を分断せず、相互に支え合う仕組みを作ること。そして、「支え合い」に丸投げするのではなく、「支え合いを支える」ための仕組みを作っていくことだ。

本書にはさまざまな地域の事例が紹介されている。だが、著者自身も書いているとおり、それがそのままこの国を救う処方箋になるとは限らない。地域の政策はあくまで地域のオーダーメイドであり、単純に応用すれば済むというものではないのだ。国がなすべきことは、従来の縦割り型の補助金制度ではなく地域の創意工夫を財政面から柔軟にバックアップするための制度構築であり(これは主に官庁の役割)、そしてやはり、社会保障を支えるための税源確保として「増税」に踏み切る覚悟であろう(これは政治の役割)。

だが、増税がうまくいかず社会保障制度が壊れかかっている一因は、増税を唱える政治家や政党が選挙に落ちることが当たり前になってしまっている現状にあることも忘れてはならない。民主主義に良い点があるとすれば、愚かな有権者は報いを受ける、ということなのかもしれない。