自治体職員の読書ノート

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【1151冊目】武村政春『生命のセントラルドグマ』

セントラルドグマとは、「中心定理」とか「中心教理」のこと。本書では「遺伝情報がDNAからRNAへコピーされ、それがタンパク質に翻訳される」(p6)という一連の流れを、分子生物学の「セントラルドグマ」として紹介している。

ふうん、そういうのをセントラルドグマというのか、とも思ったが(個人的な感覚では、ドグマという言葉はそういう「事実」に類することではなく、むしろ抽象的で形而上的な「信念」とか「理念」に使うような印象があったので)、それはともかく、このDNA→RNA→タンパク質、という流れの中で圧倒的に重要な役割を果たすのはRNAであり、今の分子生物学の世界ではRNAがとても注目されているのだそうだ。

ただし、DNA上の遺伝情報のRNAへのコピーや、RNAからのタンパク質の生成には、それぞれ一筋縄ではいかないややこしさと、それにもかかわらず案外いい加減な仕組みが存在する。こんなのを見ると、ドーキンス先生がどんなに口を酸っぱくして神を否定しても、やはりこんな複雑緻密かつある程度いい加減な、つまりは「神業的」なシステムが偶発的に生じたとは信じられないくらいのシロモノである(あ、別に創造説に転向したわけじゃありませんが)。

しかもそんな精巧な仕組みが、ミジンコでもそのへんの雑草でも犬でも人間でも、あらゆる生物の中でちゃんと稼働しているのだから恐れ入る。分子生物学の本は、どれもそれなりにおもしろいのだが、読めば読むほど、その仕組みが自分の中で動いていることが信じられなくなるのが困る。

本書の内容自体は、それなりに専門的なところまで突っ込んで書いてあり、書かれた当時の最新の成果までしっかり押さえられている。残念ながら少々わかりづらく感じたのは、多分私の未熟さゆえのことだと思うのだが、ただ、たぶんわかりやすくするため挿入されていると思われるいろんな「たとえ」がことごとくスベっているのは残念。

ふつう、たとえ話は読者の理解を促進するために使うものだと思うのだが、本書のたとえ話は、それまでの文脈を切断して突然出てくる(何のたとえ話なのか分からない)上、たとえ自体も必ずしもどんぴしゃりではまっていないので、読んでいて少々ツライ。読み方としては、いったんたとえ話の部分は飛ばして本文を読み、概要を掴んだ上で「たとえ」の部分に戻ったほうがよいかもしれない。