自治体職員の読書ノート

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【746冊目】杉浦康平『かたち誕生』

かたち誕生―図像のコスモロジー (万物照応劇場)

かたち誕生―図像のコスモロジー (万物照応劇場)

「かたち」は、「かた」+「ち」である、という。「かた」は「型」、すなわち形状、フォルムをいうのに対し、「ち」は「いのち」であり、「ちから」であり、「血」「乳」である。「かた」が静的であるのに対し、「ち」は動的でダイナミックで、エネルギーを秘めている。「ち」が「かた」を動かし、変容させ、エネルギーを与える。そこに「かたち」というもののダイナミズムがある。

本書はこうした「かたち」のダイナミズムを取り上げることで、「かたち」によって形成されている世界そのものを読み解くものとなっている。ものすごく面白い。理論や歴史だけではなく、こうした世界の見方もあったのかと気づかされる。唐草模様に隠された「渦」「生命」の意味、マンダラや須弥山を通じた仏教的世界観の凄み、白川漢字学にも通ずる漢字の「かたち」としての奥深さ、注連縄から水引にまで通貫する「陰陽」の思想……。「かたち」を通じて、世界そのものが本書の中で立ち上がってくる。

また、取り上げられている図版の豊富さと鮮やかさ、ユニークさにも驚かされる。文章と図版がこれだけ融合し、渾然一体となってメッセージを伝えてくる本はめずらしい。本書にあっては、図版は文章の添え物ではなく、書物を構成する重要な存在なのだ。本書自体にもブックデザインについて、その秘密がたっぷりと明かされているが、本書自体のブックデザインもすばらしい。本と世界の関わりの奥深さについても、考えさせられる一冊である。