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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【354冊目】ポール・ギャリコ「マチルダ」

マチルダ―ボクシング・カンガルーの冒険 (創元推理文庫)

マチルダ―ボクシング・カンガルーの冒険 (創元推理文庫)

マチルダはボクシングが好きなカンガルー。サーカス向けの出し物のひとつだったはずが、行き違いが重なって世界チャンピオンをKOしてしまうのだが、そのチャンピオンにはマフィアの後ろ盾がついていた。しかもそのKOシーンを新聞に書きたてられてしまったことから、とんでもない大騒ぎが・・・・・・。

なんとカンガルーの「ボクサー」を主役にした奇想天外な小説。文字通り純粋で邪気のないカンガルーを中心に置いたことで、周りの人間たちの野心や欲、プライドが実にこっけいなかたちであぶりだされていく。現代(といっても書かれたのは1970年)の社会、マスコミといったものへの痛烈な皮肉が、心温まるファンタスティックな展開の中にひそんでいる。物語は「元チャンピオン」リー・ドカティとの再戦に向けて動いていく。試合を妨害しようとするマフィアと、マチルダの「マネージャー」ビミーらの対決も面白い。

とにかく、こういう小説はあまり説明するのも野暮というもの。とにかくどこを切っても面白い、上質のエンターテインメントである。