自治体職員の読書ノート

読むために書くのか、書くために読むのか。

【318冊目】松岡正剛監修・イシス編集学校構成「物語編集力」

物語編集力

物語編集力

ISIS編集学校という、インターネット上の学校がある。

大きく「守」「破」「離」の3段階に分かれ(他にもいろいろある)、全体を通じて松岡正剛氏の編集術を習得できるようになっている。実は私自身、こないだまで「守」の学衆(生徒)であった。冬には「破」を申し込もうかと思っている。本書はその予習のつもりで読んだ。

本書では「破」のなかでもクライマックスとなる「物語編集術」で、実際に過去の学衆の方々が、一定の物語の「母型」に沿って作り上げた3000字の「物語」を集成し、物語の5大構成要素「ワールドモデル」「キャラクター」「シーン」「ストーリー」「ナレーター」でカテゴライズしたものである。それぞれに説明がつき、物語には「師範」の講評がつけられている。物語の出来にはかなり幅があり、中にはプロの小説家の短編と見まがうようなものもあるが、面白いのは、いずれも一定の映画(スターウォーズ、007、エイリアン、寅さん・・・・・・)の物語から「物語の母型」を取り出し、それをもとに書かれているところである。もちろん舞台や登場人物などはすっかり変えられているが。読みながら、この物語の「マザー」となっているのは何かな、などと思いをめぐらせるのも一興であろう。

しかしこのことは、裏を返せば、物語には一定の「マザー=母型」というものがあり、それにあわせて情報編集を行うことで、誰でも物語作家になれてしまうということなのである。そしてそのこと自体に、実は物語というもの自体の本質がひそんでいるのである。こんな実も蓋もない事実を、これまで物語など書いたことがない多くの人たちにこれほどの物語を書かせることで明らかにしてしまった編集学校という存在、松岡正剛という存在の凄さは、やはり並大抵ではない。ああ、早く「破」に申し込みたくなってきた。