自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【185冊目】野上弥生子「海神丸」

海神丸 (1952年) (岩波文庫)

海神丸 (1952年) (岩波文庫)

難破した船を舞台に、極限状況に置かれた人間のすさまじさと哀しさを描いた小説。緊密な文体と迫真の描写で息もつく間もない。特に、その肉を食らうために仲間の船員を殺害する瞬間の恐怖はただごとではない。人間が人間でなくなっていく様子を描ききった名作である。