【1984冊目】ギ・ド・モーパッサン『女の一生』
箱入り娘だったジャンヌが、結婚して遭遇する波乱万丈の生涯。夫に裏切られ、息子には金をせびりとられ、夢に満ちていたはずの人生は、みすぼらしく悲惨なものになってしまう。夢も希望もないリアリズム一辺倒の「女の一生」を容赦なく描いた、モーパッサンの代表作。
これ、すっごく面白かった。ジェットコースターのような展開に、先読みができてもなお先を読みたくなる絶妙の語り口。「どこかで読んだ展開」が多いのは、むしろ後発の作品の多くが、この本をお手本にしているからだろう。
特にラスト近く、すっかり年老いたジャンヌが、破産によって手放したかつての邸宅を訪れ、追憶にひたるシーンは、涙なくしては読めない。夢も希望もある若者には分からない、酸いも甘いも噛み分けたオトナのための一級文学。